アスリートの対談から人生を学ぶ

一流アスリートの対談

松井秀喜×松井稼頭央 対談1/10

https://www.youtube.com/watch?v=UUEs9JjbuA8

 

松井秀喜=秀:   松井稼頭央=稼:   ナレーション=ナレ:

 

 

ナレ:世界中からの夢追い人が集う街、それがアメリカ・ニューヨーク。

 

秀:目標はワールドチャンピオンという一つしかないんですけど。

 

稼:ボロボロになるまで当然やりたいし。自分の中で、まずは世界一のショートになると。

 

ナレ:そんな夢の舞台で昨年、2人の日本人メジャーリーガーが躍動した。

 驚くべきことは一つもない。その成功は8年前、既に約束されたものだったのだから。

 

MLB選抜チーム 監督 D.ベイカー

「【字幕】彼等ならメジャーで生き残れるだろう。ビッグ松井(秀喜)とリトル松井(稼頭央)ならね」

 

ナレ:しかし、その裏には、我々の想像をはるかに越えた苦悩と葛藤の日々があった。

 だからこそ秀喜は、どうしても会っておきたかった。

 

<東京>

 

稼:まさかですよね。

 

秀:「すごいな、稼頭央」と思った。

 

ナレ:だからこそ稼頭央は、聞いておきたいことがあった。

 

稼:あの強さは何なんですかね。

 

秀:「そんなわけねえだろ」みたいな。

 

ナレ:一体、どんな言葉が飛び交うのか。

 

稼:左手の感覚っていうんですか。

 

秀:(バットを左手に持って)こっちの手でバツンって。

 

ナレ:性格、感性、理想。別々の人間なんだから、全く同じことなんてまずあり得ない。それでも同じフィールドに立ったものだけが分かち合える、特別な思いがあるはず。

 今夜、今なお夢を追い続ける2人の松井がすべてを語り、すべてをさらけ出す。

 「HEROズ N.Y.野球小僧の夢 松井×松井」

 

<スタジオ>

 

松井(秀)、松井(稼)、握手とあいさつ。

 

秀:今日は何でスーツ着てんの(笑)

 

稼:いや、何かちょっと……。

 

秀:俺だけ行儀悪い人じゃない?大丈夫?本当に?着替えてくればよかった。

 

稼:お願いします。

 

秀:はい、お願いします。

 

それぞれ着席。

 

稼:緊張するでしょう、普通。緊張しますよ、やっぱり。こうして……。

 

秀:しないだろう。

 

稼:こうやって話するの初めてですからね。

 

「秀喜(30才) 稼頭央(29才)」の文字

 

秀:そうだな。のんびり話すのは初めてですね。

 

稼:そうですね。

 

秀:球場でちょこちょこっとしか。

 

稼:そうですね。

 僕らがニューヨークにいても、大体入れ違いですもんね。

 

秀:そうですね。ヤンキースがいるときは、メッツが出ているしね。メッツがいるときは、ヤンキースが出ているしという感じだから、会うこともないもんね。

 

【初めての会話】

秀:一番最初に会ったときは、向こうで会ったときは、サブウェイ(シリーズ)で初めて会った。

 

稼:初めてですね、はい。

 

ナレ:ヤンキースとメッツ、互いの本拠地を地下鉄で行き来できることから、そう名付けられたメジャー屈指の好カード。それが「サブウェイシリーズ」。

 そして昨年、歴史的大一番の舞台に、2人の日本人メジャーリーガーが立った。世界一辛口で知られるNYのメディアが2人の一挙手一投足に鋭い視線を送る。

 そんなプレッシャーの中、まずはヤンキースタジアムで秀喜のバットが火を噴いた。打球はヤンキースファンの待つスタジオへ。なんと、サブウェイシリーズ2年連続となるグランドスラム

 稼頭央も負けてはいない。シェイスタジアムでメジャー初となる1試合2ホーマー。2004年のサブウェイシリーズは、まさに2人の独壇場だった。実は2人がNYで顔を合わせたのは、これが初めてのことだった。

 

秀:何話したっけ。

 

稼:メディアのこととかね……。

 

秀:そうだよね。「どこに住んでんの」とかね。「どういう生活してるの」とか、そういう感じだったよね。

 

NYメディアのバッシング】

 NYのメディアはね、いいときは別にそれでいいんだけど、いいときは別に普通なんだけど、そうじゃなくなったときの書き方というのは結構ひどいよね。ひどいし、明らかに悪意を持った聞き方してくるよね、やっぱり。そこら辺はやっぱりもう……。

 

稼:遠回しに言ってこないもんね。

 

秀:そうそう。ズバズバ。

 

稼:ズバズバ来ますもんね。

 

秀:俺の場合はジャイアンツにいたからも、これも多少話したけど、こういうことを書かれることに関しては、結構慣れているところがあって、結構気にならなかったのね、俺は。稼頭央はやっぱり、その辺は最初、多分面食らったんじゃないかなというか。俺は想像していたんだけど。

 

稼:想像を超えましたね。まさか……。僕はパ・リーグだったんで、そんなに新聞に扱ってくれるわけでもないですし、打っても打たなくても大きく出なかったですから、日本の記者に新聞持ってきてもらって、結構言われたりしましたね。

 

秀:特にやっぱり、稼頭央としてはあれなんじゃないの。バッティングは絶対、ある程度慣れるまでは大変だと思うと思ったのね。自分の経験からしてね。ただ、やっぱり守備でそういうことを言われたりするのが一番きついんじゃないかなと思った、俺としてはね、どっちかといったら。

 

稼:そうですね……。

 

秀:そんなことない?

 

稼:守備はやっぱりかなり大きかったと思いますね。打つ方は多少慣れればいいと思いましたし、守備で、ショートって要じゃないですか。それでエラーしたら、大体点入るんですよ。それでことごとく、エラーもしましたし、やっぱり守備でいい状態じゃないと、打つ方にも余裕が出ないというか。

 

秀:まあ、そうだね。

 

稼:そういうのはありました。

 

秀:俺はちょっと見ていて思ったんだけど、捕る方のエラーはもちろん本人の責任だし、しようがないときもあるけど、投げる方のエラーは、見ていて、「(マイク・)ピアザ、それ捕れるんじゃないの」って。内心思っていなかった?俺、見てて思った。「お、あれ捕れるんじゃないの」とか。そんなことない?

 

稼:(笑)イップス気味になりましたね。

 

秀:俺、思ったけどなあ。

 

イップスとは?「緊張で手が動かなくなり、正確な動作ができなくなること」

 

稼:今年メッツね、7人ぐらいファースト替わっているんですよ。ピアザから、最後(カリーム・)ガルシアまでファースト練習していましたからね。

 

秀:俺、「ビアザ、あのぐらい捕ってあげようよ」って思ったのはあったよ、マジで。

 

稼:でもやっぱり、キャッチャーからファーストじゃないですか。

 

秀:ああ、まあね。難しいだろうね。

 

稼:ブロッキングしにいってしまうんですよ。

 

秀:捕るというよりも、球止めちゃうという。

 

稼:多分そうです。

 

秀:それもちょっとね、気の毒だと思ったのあったよ。

 

―了―