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本田圭佑名言#5「中田英寿×本田圭佑対談」サッカー哲学 インタビュー

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中田英寿=中:   本田圭佑=本:  ナレーション=ナレ:

 

本:僕はまだ世界で戦っていないって、自分では思っているんですけどね。まず、モスクワレベルでようやくスタンダードに来たかなと個人的には思っているんですけど。チーム内で競争があるじゃないですか、海外って。もうふだんの11、オランダって11重視するというか、11仕掛けへんやつはサッカー選手じゃないぐらいの雰囲気なんですね。11まず強くならな思てね。日本にいたときはもうパスなんですね。パスサッカー力学がすごい、個人的にあって。

 

ナレ:2005年、石川県の星稜高校から名古屋グランパスに入団した本田。当時の持ち味は、ゴールを決めることではなく、ゴールをお膳立てするパス。プロ1年目からチームのレギュラーとしてゴールを演出した。その能力を買われ、オランダ一部リーグVVV(フェーフェーフェー)フェンローへ移籍。(オランダ語?)

 順調なステップアップを夢見て挑んだ海外でのプレイ。ところが、移籍して半年、チームが2部へ降格。本田の前に大きな壁が立ちはだかった。

 

本:まさか自分がサッカー2部でやるなんてという。まさかという感じなんですね。あまりもいい、イメージがあるので、そこで2部。この先、自分の向こうにどうしてたどり着くのか。こんな2部から、底辺からと思ったときに、まず自分のサッカーを否定しないと、次のステップに行かれへんのちゃうかなと思ったんですよね。じゃ、どうやったら次のステップに行けんねんといったら、点取らんと誰も見てくれへん。2部なんかスカウトも見てくれへんのに、アシストして、じゃ、アシストの前の起点になって、誰が移籍させてくれんねんというような、自分でメンタルにコントロールしたんですよね、毎日。そこですかね、自分のプレースタイルが完全に変わったなって個人的に思ったのは。世界で一応認められるのは、パスじゃなくてゴール。ゴールした奴が一番偉いみたいな、そういうのはすごく感じましたね。

 

中:僕が実際にイタリアに行ったときに、やっぱり日本人で、ナメているわけですよね、みんな。

 

本:完全にナメてますね(笑)

 

中:「何しに来てんだ」ぐらいで、パスも回ってこないし、その状態から始めるには、結局点を取るしかないと。

 

ナレ:世界では、点を取って初めて認められる。かつて中田はそれを証明していた。

 セリエAペルージャに移籍して迎えた開幕戦。強豪ユベントスから見事なゴールを奪う。さらに追加点を決め、2ゴールの大活躍。世界最高峰の舞台で衝撃デビューを飾る。イタリアに来てわずか1試合でチームメイトからの信頼を勝ち取った。

 

中:結果を出せば、当然のことながら、今度はパスが集まってくるようになるというのは。外国はもう本当に。

 

本:シンプルですね。分かりやすいですよね。

 

中:本当に分かりやすい。目に見えて。今度は逆にもう本当にみんなが集めてくれるぐらいになるしプレーの変化、そうなったというのは、すごく海外向きのプレーだと思うし、そこからパスという選択肢は後からついてくるとしても、やっぱり得点が取れない選手というのは、特にミッドフィールダーの選手では、やっぱりそれをしない限りは、海外では致命傷かなという

 本当に今、すごくシュート力もあるし、前に行く姿勢というのもすごく攻撃的で海外向きだなと、今のプレー見る限りすごく思うので、オランダの2部に落ちた経験というのがよかったんじゃないかなとは。

 

本:本当なんですよ。

 

中:何というかね、プッシングというか。

 

ナレ:異国の地で生き残るか、パスを出す選手か。自らボールを奪う現在のスタイルへ。

2部リーグでは16ゴールを決め、チームを優勝に導き1部へと返り咲いた。

 そして今年、その活躍が認められ、ロシアの強豪クラブチェスカモスクワへ移籍。迎えたリーグ開幕戦。決勝ゴールを決め、いきなり結果を残した。ロシアの地でもゴールをめざすスタイルを貫き、その勢いはますます加速。さらなる高みを目指す本田に対し、中田からあるアドバイスが。

 

中・本田選手のプレーを見ている中だと、特に前向いたときのプレー。なおかつボールを前で受けたときのプレーがやっぱりすごく特徴的だと思うし、特にやっぱりシュート力というものは、本当にすごいシュートを打つなと、見ていて僕は本当に思っているんで、逆に押し込まれるときでも、やっぱり自分が戻って、ボールが来ないから受けにいかなきゃいけないとか、後ろ向きでボールを受ける状態をどれだけ少なくできて、どれだけうまくサボって前を向けるか。やっぱり、僕がベルージャのときで一番気を使ったのはその部分であって。

 

本:英さんそういうのうまいんですよね、見ていて思うの。前に走りながらもらう。

 

ナレ:現役時代、中田はあることを意識してプレーしていた。それは、攻撃のとき、後ろ向きでボールをもらわずに、動きながら前を向いた状態でパスを受けること。攻撃の選手なら、誰もが理想とするプレーだが、実際にすることは難しい。では、中田は世界最高峰の舞台でいかにして前を向いていたのか。

 

中:僕はドリブルでフェイントをやる選手じゃないから、それよりもスピードの緩急で入り込んでいくプレーを。相手を初回追いつかせないという。

 

本:もらった時点とかでね。

 

中:そう。で、それをまずどう走っていて、前を向いて、相手の前に出られるかという、そのポジショニングを、いつも味方のボランチのボールをとる全体、もらう全体で周りを見ておいて、後ろを向かずに半身にしながら、どうやれば行けるかなというのをまず見ておく。

 

本:賢いなあ。

 

ナレ:前を向くためのポイントは「パスの受け方」と中田は言う。

 ピッチ中央にいる中田がドリブルで独走し、シュートまで行ったこのシーン。後ろ向きでパスを受けるのではなく、ワンタッチで前を向けるように動きながら、半身になってパスを受ける。半身でボールを受けることで、常に前を向くことを可能にしてきた中田。これがイタリアで成功した秘訣だ。

 

中:うちらの練習では、必ずボランチも、もらった瞬間に僕を見てというのをやっていたので、その代わり、本当にディフェンスのときには少しサボりつつ、味方のボランチがボールを受ける前提でポジショニングをある程度とっておく。

 

本:代表でもそれ出てきましたか。

 

中:98年の頃はやっていました。98年の頃はいつもやっていたから、名波(浩)と山口(素弘)、2人がいて、あの2人がボールを受ける前提で、僕はもうほとんど、そのまま自分がすぐに前向いてドリブルに入れる、それをいかにできるかというのをやったので、結構プレー見ていると、似たようなプレーをやっていたので。

 

本:(8:52)とんがっちゃってね。

 

中:それがやっぱり本当に微妙なサボり方、まず。味方を信じて、うまく言えば信じて、ボールをとってくれると。とったときには、まずここのボランチに大体ボールが入るから、そのときに自分は次にどういう状態でどこのポジション受ければ半身で受けられるか。それなら一発目で前向いていけるから。そうするともう、相手のボランチに向けてはシュートしかないから。スルーパスか。

 

本:すごかったですもんね。ペルージャ時代。

 

中:それしかやっていなかったんですよ。

 

本:すごいなあ。

 

中:やっぱり自分がトップ下の選手だと思うんであれば、そういうプレーを。

 

本:参考にします。

 

中:やれていると、もっと。

 

本:なるほどね。

 

中:本当にもうどんどん遠くからシュート打っていくべきだし、特に今のサッカーボールって、本当に進化していて。

 

本:軽いですからね(笑)

 

中:すごく軽くて、当たり方でどうなるかわからない。

 

本:そうですよね。

 

中:それこそ、10本打って1本も入らなきゃバカだと追われるけれども、1本入ればそれだけでもうヒーローですから。

 

本:言われますからね。

 

中:やっぱりその自分の特徴を出せるように。

 

ナレ:この後、4年前(2010年の対談なので2006年ドイツ大会のこと?)の知られざる真実が明らかに。

 

本:俺から見ていてすごく孤独やろうなと思っていたんですよ。

 

中:僕も2006年で一番失敗だったと思うのは……。

 

中:僕は、今日は会って一番伝えたかったのは……。

 

本:今、すごくビリ争いで苦しんでいるんですけど、出られるんですけど、トップ下で出られないんですよ。僕もやっぱり守備を要求されるシチュで、その中で、周りとの兼ね合いで、周りがうまくなければ、自分がパッサーにならないといけないとか、そういう、周りを生かさないといけないという状況が結構あるんですね。

 プレーの質もそうなんですけども、メンタルなんですかね。ちょっとバランスとろうと思っている時点でもう負けというか。

 

中:言いたいことはよくわかります。わかるし、間違いなく僕もそうだと思う。やっぱり自分がチームのため、バランスをとるということを考え始めると、やっぱり、それと自分の個性を出して、前へ点を取りにいく。やっぱり自分が個性を出すことは、勝たなきゃ絶対ダメだと。

 

本:そうですよね。それで負けたときにはもうやめますよ、僕も。

 

中:やっぱりそれは当然周りにも言われるだろうし、本当にチームメイトから、監督から、メディアから何から言われるだろうし、結果が出なければ。だから、それを本当に、また僕が周りから見る分で思うイメージやと、周りから文句言われるの、嫌いじゃないでしょう。まあ嫌だとは思うけども。

 

本:いやもう、おっしゃるとおりです。

 

中:でも、それが力になるでしょう。

 

本:悪くないです。何か目立っているなって感じしますね。

 

中:だからその感情の部分は何となくわかるわけですよ。

 

本:なるほど(笑)

 

中:逆にそれが、いや、ディフェンスも頑張って、よくやっているなと言われる方が、多分ダメだと思う。

 

本:そうなんですよね。自分のプレーで認められたいんですよね。やっぱり自分がよりゴールに近い、ストライカーじゃないですけど、よりゴールに近いところでプレーしたいですし、そこでシュートをがんがん打って、やっぱり相手にすごく嫌がられる方の選手というのが僕の理想像ですし、やっぱり僕はボランチで、ビッグクラブでプレーすることではなくて、サイドハーフでビッグクラブでプレーすることじゃなくて、やっぱり譲れないものは、自分の好きな真ん中のポジションでビッグクラブでプレーする。そうできる。それでもうそのビッグクラブの監督が俺を使わざるを得ないようなプレーヤーになることですかね。ゴールを決めろと。もしくは常に決めさせられる選手。どっちにしても、ディフェンスにとって最も嫌な選手みたいになりたいですよね。

 

中:だからやっぱり、今の現代サッカーというものを踏まえた上で、でもやっぱり自分の個性、ワガママというのを……。

 

本:どれだけ出せるか。

 

中:どれだけ出せるかというのが、特に今、日本代表の中で必要なことじゃないかなというのを僕は思うし、やっぱりいろいろ言われることも多いと思うし。

 

本:そうですね。

 

中:だけども、その中でも、やっぱり自分のプレーを出し続けられるかどうかというのは、本当に個人のステップとしても大事だろうし、また今の日本代表に一番必要なものじゃないかなというのは何となく周りから見ていて思うところですね。

 

―了―