イチロー × 松井秀喜 対談 2
イチロー×松井/ 対談②
松井/いろんな意味でね、やっぱり結婚されて、
イチロー/しろよ。しようよ。
松井/ちょっと待って。
イチロー/そろそろ、しようよ。そりゃ、いいよ。
松井/そりゃいいと思いますよ。
イチロー/気持ちがやっぱ違う。
松井/気持ちが違う、いろんな意味でね。野球にはプラスになるような気がしますよね。
イチロー/そりゃそう、野球にはじゃない、それ以外にもプラスになる。
松井/(笑)
イチロー/気を付けようよ、言葉の使い方。野球にも。
松井/野球にも、ね。
イチロー/結婚しろよ、しようよ。
松井/そこに戻るわけ?
イチロー/うちは、弓子と一弓という犬がいるんだけど、彼らのおかげで隋分違うよね。家帰って野球のこと、どうしても考えるよ。考えちゃうけど、なるべくクラブハウスで全部整理をして、次の日に持ち込まないというのは基本的な気持ちだけど、良くない時はどうしても家に持ち帰るし、家族にも話をしてしまう、弱音を漏らすこともある。やっぱりそういう存在がいるということは、ちょっと楽にしてくれる、気持ちをね。
松井/そういうの聞くと、いいなと思いますよね。
イチロー/いいから。いっとけよ。
松井/(笑)でも、うらやましいなと思いますよ。
イチロー/ちょっと表面的なんだよねえ。
松井/いえ、そんなことないです。うらやましいなと思いながらも、う~ん、もうちょっといいかなと思う自分自身も確かにいるんですけれども。自分でね、自分のタイプってまだはっきりしていないような気がするんですよ、ほんとに。
イチロー/なんだそれ。
松井/ほんとに。
イチロー/俺はね、やっぱり自分にないものを持ってる人。それかな。弓子で言うなら、上品なところだったり、気配りとか目配りとかができる人。
松井/そういう自分ができないところができる人に魅かれるわけなんですね。
イチロー/優しいところとか、人に対してね。そういうところは好き。でもやっぱり、上品な人、清潔感のある人、透明感のある人、うるさいね俺も。そういうのはタイプだね。
松井/僕こう見えて、心配性なんですね。
イチロー/何に対して?面食い?
松井/そうじゃなくて、相手の女性が例えば、
イチロー/女性っていうもんね。
松井/いいじゃないですか。
イチロー/女っていうもん。
松井/変わんないじゃないですか。
イチロー/決定的に違うでしょ。
松井/いや、そうですか?
イチロー/そうやって言おう、女性ね。
松井/だから、相手のことが心配になるというか、例えば、病気っぽかったりとか、
イチロー/病気したってこと?最初っから病気っぽいということ?
松井/そういうこともあるし、まず元気でいてほしいし常に、野球選手って、常に一緒にいれないじゃないですか。そうでしょ。だから、僕がいないときも、僕が一緒にいないからと言って、心配するような子だと嫌なんです。いろんな意味で。
イチロー/それは、やっぱり現役中はつらいはね。
松井/いろんな意味で。
イチロー/それは心配するもん、当然。
松井/そういう意味で、性格的にも常に外交的で明るい人がいいし、もちろん普通のバランス感覚持っててほしいし、常識的な部分も身に付けててほしいし、さっきイチローさん言われてた部分もそうだし…うん。
イチロー/持ってる、タイプ。それがタイプじゃん。
松井/出てきましたね。
ナレーション/松井選手のデビューは、それはそれは華々しいものでした。本拠地ヤンキースタジアムの開幕戦で、何とライト満塁ホームラン。名門ヤンキース101年の歴史の中でも、本拠地のデビュー戦でホームランを放ったルーキーは、松井選手が初めてでした。
松井/歴史に名を残しましたね。
アナウンサー/残しましたよ~(拍手)
松井/(笑)
ナレーション/しかしメジャーは、そんなに甘い舞台ではありませんでした。5月松井選手は、メジャー独特の沈むボールに対応できず、内野ゴロばかり打っていました。ニューヨークのメディアは、日本のホームランキングの醜態に、すかさず食いつきました。「Ground Ball King」日本では「ゴロキング」と訳して伝えられました。さらにヤンキースのオーナー、スタインブレナーまでもが、松井選手に対して批判的なコメントを口にしたのです。「あんなにパワーのない男と契約した覚えはない。」
なぜ打てないのか、松井選手にはその理由は分かっていました。それは日本のプロ野球とのストライクゾーンの違いです。メジャーのストライクゾーンは、日本よりも外角に広く、ピッチャーもそこを攻めてきます。このままでは、ホームランどころか、ヒットも打てない。理由は分かっていても対応できない。松井選手は暗闇の中で、光を探し求めていました。
松井/日本時代の輝かしいものは、見てる方はギャップを感じるかもしれないですけども、ゼロからのスタートなわけですから。
ナレーション/ところがこのインタビューの2時間後、松井選手に転機が訪れます。そのきっかけを与えてくれたのは、彼が尊敬するヤンキースの名監督、ジョー・トーレでした。
「松井、もう少しホームベースに近づいてみてはどうだ?」頑固な松井選手が、初めて他人のアドバイスを受け入れました。スパイク半足分、何と14センチもホームベースに近づいたのです。この日を境に、松井選手は、「ゴロキング」を返上しました。ホームランは16本しか打てませんでしたが、ヤンキースのレギュラーとしてゲームに出続けた松井選手は、100打点を超える数字を残すことができたんです。
松井/このラインって、球場によっていい加減じゃないですか、ハッキリ言って。
イチロー/もうラインがない所もあるからね。
松井/そうですよね。だから自分の間隔して、このベースもう一個分を置いて立つんです、いつもね。その間隔を置いて立ってたんですけど、メジャーはそれこそ、この辺までストライク取られてたんですよね。
イチロー/もう、最大ここまでストライク。この辺のときは稀だけど。
松井/やっぱりこの辺の変化のボールが多いんで、どうしても引っ張って打つしかなくて、同じ失敗を繰り返してたんですね。僕は、基本的に立ち位置を変えるのが好きじゃないんで、ず~と近づけとか言われながらも、
イチロー/それは監督?コーチ?
松井/コーチとか、スタインブレナー オーナーにまで。(笑)
イチロー/そうですか、オーナーに。
松井/もう少し近づけて立った方がいいんじゃないかと。結局最後に、トーリに「外のボール気になるんだったら、ちょっと近づいてみたらどうだ」と言われて、それで足の半分くらい、一気に近づきましたからね。14,5センチくらい、これくらいですかね。
イチロー/バッターにとって、10何センチ近づくって、とんでもないことなんですよ。俺ここだけど、こんだけで違うんだ。
松井/そうです。
イチロー/この動きだけで違うんですよ。これで。気持ち悪いですよね。
松井/動くだけで。
イチロー/もう、全然違う。それをこれだけ(半足分)動くっていうことは、怖いよね。
松井/すごい、気持ちは悪かったですけど。
イチロー/オーナーに言われたからね。それはすごいよね。高校生じゃないからね。
松井/それで、確かにアウトコースは、今までよりボールになるケースが増えたんですよね。同じような遠さを見送っても、ボールになるケースが増えたんですよ。
イチロー/でも体が覚えてるから、振ったりしない?
松井/やっぱしますよ。しますよ。
イチロー/そうでしょ。
松井/ボール球追いかけててとか
イチロー/今度は、そこの我慢が難しいでしょ。
松井/でも、意外と今までも、結局手出てなかったわけでしょ、ここのボール。
イチロー/じゃ、我慢できる。
松井/そうなんです。
イチロー/振りにいく人を羨ましいとは思わないけれど、我慢できる人、すごい羨ましい。
松井/我慢する方ですね。するというか、意外とできる方かもしれない。逆にむしろ逆に困る時の方が多いですね。あ、また見ちゃったみたいな。(笑)そっちの方が多いかもしれないですね。