落合監督が語る日本一への道 2-6
そして第5戦、落合監督が先発に任せたのは山井。
故障で長い2軍生活を過ごした男が、大一番で力を発揮します。
8回まで1人のランナーも出さないピッチング。
シリーズ史上初の完全試合なるか。
期待は最高潮に達しました。
所が9回、落合監督がピッチャー交代を告げます。
完全試合目前でまさかの降板。
しかし、山井に未練はありませんでした。
「勝ちにこだわったっていうか、日本一になりたいって気持ちしかなかったです」
守護神岩瀬が3人で締めくくり、パーフェクトリレーで日本一を決めました。
大舞台で最高のプレイを見せた選手たち。
監督就任から4年、チームはたくましく成長しました。
「まぁ、良くぞここまで、あの~、耐えて精神的にも強くなったな~っていうのが、実感としては今の今の感想です」
「えぇ、阪神との戦いの中でチームがガラッと変わった。でも落合監督は何もおっしゃられなかったっていう事を聞いたんですけども?」
「一言も言ってません」
「うーん」
「言っちゃまずいと思った」
「うーん」
「まぁ、ウチのチームの特徴っていうのは、他の人がね、例えばコーチだとかOBだとか、何か言ってもね、そんなに反応はしない。監督の一言に敏感に反応するチームだから。だからこっちも言葉を選んで喋らなきゃいけない」
「それはいつ位から感じられたんですか?」
「いや、それはもう入った時から」
「うーん」
「まぁ後山井は、そうやってシリーズで8回終わった所で、まぁ色々賛否両論というか、色々言われてもう言いたくないだろうけども」
「100%言いませんですよ。何があったって言いません俺は。そうやて4年間このチームを作り上げて来たんだもん」
「いやいや」
「そりゃね、恩情だとかね、そういうあれじゃなくて、うちの最高の勝ちパターンはあの状況で山井に行けって言ってたら多分打たれてるだろうと思うし。潰れてなくても。あのプレッシャーに耐えれる子ではないだろうと」
「やっぱマメとかハトとかあったんでしょ?」
「ある」
「まぁでもね、普通で考えて俺と落の関係でそういう風に考えると、当然変えるだろうなぁと、絶対変えるだろうなぁと思ってた。うん。これはもう。」
「何でもなくても変えてると思う」
「うん、当然やと思う」
「5対0だったら分からん」
「うん、点数とかね。後、シーズン中にもしそういうケースがあったら?」
「シーズン中?」
「どうでもないケース。普通に今日は負けても勝ってもいいよっていうようなケース」
「だったら山井に行くでしょ」
「行くね。だからその辺がね、もうすごくあってるなって思って。まぁ他の人は色んな事言ってたけどね。当然変えるだろうと。そこの前に行くまでのプロセス見てると、ね、阪神クライマックスシリーズでも、一回3分の1、2って岩瀬がずっと言ってる訳」
「イニングまたぎましたしね~」
「そう!そういう事考えると、当然交代なだよね。うん」
「梨田監督の時でもそうですか?」
「変える。当然変える。その時聞いてるもん、電話でどうする?って」
「その日で終わらせたいんだもん」
「そうだね」
「北海道に行きたくないんだもん」
「だから逆に岩瀬が、あの、まぁちょっと大げさかも知れないですけど、チームを救ったというか、完結させたっていう意味では僕、すごいクローザー抑えだな~っていうのは思いましたけどね」
「だからそこを何でクローズアップしないのかな?って。何であそこがクローズアップされてね。あそこを抑えた岩瀬に何でスポットライトをあげないのかなって。俺、それが気に入らないっていうか気分悪いっていうかさ。あ~野球って事を考えてないんだろうなって」
「今日はだからもう岩瀬に。信頼してますよと」
「もうとにかく全てにおいての、安心感って言ったらもうあそこは岩瀬しかなかったんですね~」
「だからウチの戦い方っていうのは、8回までどうやって1点勝って終わらそうか。9回で1点勝って終わるんじゃない。8回までどうやってこのゲームを勝って9回に入って行こうかっていう野球だから。俺おそらく上原でも藤川でも打たれたろうなと思う。あの状況でキチッっと抑えて来るっていうのは、まぁ今のプロ野球界の中では岩瀬だけだと思う。そりゃ分かんないよ?分かんないけどね」
「現場のトップとしてやってこられた中でも、何か、あぁやってよかった、楽しいなっていう部分ってどういう所なんですか?僕はちょっと経験ないんですけど」
「楽しいなっていうのはないよ俺」
「野球に対しては好きな事だからもう当たり前のように野球界には居るっていう感じですか?」
「何でこんな苦労しょわなきゃいけない、人の事で自分があんだけ、あのぅ、しんどい思いしなきゃいけないのかなって、逆に考えるよね。俺今年初めてだもん、薬飲み始めたの。寝れなくて。3年間なかったの。」
「はい」
「今年、俺とピッチングコーチ2人」
「いや、それが普通やと思うよ」
「えぇ?」
「それが普通やと思うよ」
「なんでこの3年やって4年目にしてみんなこんな選手の動きが悪くなっちゃったんだろう。どこが間違ってたのかな?って考え始めたね。それで今年のキャンプからピッチャーが悪いっていうのは、ピッチングコーチも俺も知ってた。で、それがあるもんだから、ピッチングコーチと俺と2人で初めて、
普通に関係なく寝れる人間がさ、眠剤飲みながら1シーズンやったっていう。へぇって思いながら。自分じゃ不思議でしょうがないもん。」
「うーん」
「でもそれが、あのビールかけで全部解消されるっていう」
「あの一瞬で?」
「あの一瞬で、解消されるんだよな!お前言っていいだろ?」
「3回ね!俺のうち3回だもん!」
「じゃその一瞬、ビールかけ、優勝、その一瞬ですか?」
「あの一瞬!それで、あれが終わったと同時に来年の事考えてるもんな」
4年間で、リーグ優勝2回。そして、日本一1回。落合監督は、どのようにしてドラゴンズを最強チームに育て上げたのでしょうか。
そこには、現役時代から変わらぬ、一貫した考えがあります。
現役時代、三冠王を3回の大記録を達成。
神主打法と呼ばれた独特のフォームは、独学で研究を重ねて編み出しました。
トレーニングにも独自の発想で取り組みました。
当時、野球界ではあまり例のないユニークな練習方法を次々と取り入れます。
プロは、自らの判断と責任で行動すべし。
オレ流と呼ばれたスタイルを貫きました。
現役引退後に書き上げた一冊の本。
指導者はどう育てるべきかまとめたものです。
この独自の理論によって、ドラゴンズのチーム改革は進められました。
4年前、監督となって最初の春のキャンプ。
まず、練習環境を見直しました。
10人が同時に投げられる、特大のブルペンを作ります。
ここで、練習の様子をひたすら見守りました。